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水仙伝説

 1月も末になると、暖かな地方よりさまざまな花の便りが聞こえてくる。沖縄では日本一開花の早いリュウキュウヒカンザクラが咲き、房総では菜の花がまばゆいばかりである。越前では水仙。海岸に群生する水仙と紺碧の日本海のコントラストが美しい。
 水仙は清楚な中にもどことなく不思議な妖しさをもつ花である。雪の中でも芳香を放つことから「雪中花」、あるいはその形状(白い花弁と中央に黄色い花冠)から金盞銀台の異名をもつ。原産は地中海で、古くはペルシアからシルクロードを通って中国にもたらされ、それが日本に渡ったとされている。
 水仙は、植物分類上ではヒガンバナ科に属し、一説によると、水仙の球根には麻酔成分が含まれているという。水仙の属名ナルキッススも、ギリシア語で「昏睡」を意味するナルケが語源であるといわれている。  
 また、水仙には花にまつわるさまざまなエピソードがある。「千夜一夜物語」にも水仙の話があるが、もっとも有名なのはギリシア神話。美少年ナルキッソスが水に映るわが姿に恋こがれて水死し、その化身が水仙となったという話はつとに有名である。
 日本の水仙伝説は平安末期、木曾義仲の京攻めの頃に遡る。
 越前居倉の長者の家に仲のよい兄弟がいた。兄は義仲の京攻めに従い弟は留守を守っていたが、弟が命を救い恋仲になっていた美しい娘に戦から負傷して帰郷した兄も恋してしまい、とうとう娘をめぐって兄弟が果たし合う。娘はたいそう悲しみ荒海へ身投げ、その化身が水仙となったというものである。
 洋の東西を問わず、水仙の物語がいずれも「化身の話」というのは興味深い。

  水仙にとどかざる日と暮れにけり 楸邨

   (信濃毎日新聞2002年1月31日朝刊掲載)

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